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重要なことは、痴漢恐喝(示談金目的のでっちあげ)の場合も、痴漢誤認の場合も、証人なしでは絶対に駅員室についていってはならないということである。「間違いなのだから、きっと話せばわかってもらえるだろう」と、軽い気持ちで駅員室に行ってしまえば、いくら説明しても全く話を聞いてもらえず、たちまち警察に連行される。法的には、被害を訴える人物の要求で駅員室へ連行された時点で、私人による現行犯逮捕が成立している。そのため、自分に痴漢の疑いがかけられた場合、身分証明書や名刺を見せる等して身元を明らかにした上で、駅員室には行かないのが一番である。ほとんどの痴漢冤罪被害者が「自分はやっていない」という説明しようと駅員室に行き、逮捕されていることに注意すべきである。
対処法について、弁護士の見解も様々あり、現場で直ちに証人を確保して裁判で無罪を勝ち取ることが最善だとする弁護士もいる一方で、疑われたらすぐに走って逃げることを勧める弁護士も存在する[9]。裁判に持ち込まれた場合、いかに優秀な弁護士でも無罪を勝ち取ることは非常に困難であり、長期戦を覚悟せねばならないため、その間に会社を解雇されるなどの社会的なダメージをこうむる可能性が大きいからである。
その一方で駅員室に行かないことが身柄の拘束を回避できることとは必ずしもつながらないことに留意する必要がある。上で述べられたような方法で、駅員室への連行を免れたとしても、後日、警察官が自宅や職場に出向き、任意同行を求められる可能性もある。駅員室に行かないことの利点は、直ぐに、無実を証明する証人を確保したり、会社の同僚や友人、家族、または弁護士に連絡し防犯カメラの映像に対し証拠保全の手続きを取ってもらうなどの時間的猶予を稼げることにある。したがって、拘束を免れた時点で安心するのではなく、即座に的確な処置を講じていく必要がある。警察に対しては必ずしも対決姿勢で臨むのではなく、書類送検が完了する以前に、弁護士同伴[10]で所轄の警察署に出向き、向けられた嫌疑を晴らすために弁明を講じるなどの積極的手段を講じることも場合によっては必要である。警察は、被疑者が痴漢をおこなったものという前提で裏づけを捜査しており、被疑者の無実の可能性については全く調べないため、被疑者自身で無実の証拠を集めなければ、罪を着せられることになる。警察に『やってない』と拒否するだけでは相手を納得させるのが難しく『DNA鑑定で調べてください』と話すことで無実が証明される場合がある。例えば2008年2月1日大阪市営地下鉄御堂筋線の車内で起こった「痴漢でっち上げ事件」では、警察が被疑者、被害者、目撃者の証言を詳細に調べる際、被害者女性がスカートの提出を拒んだために矛盾が突き留められ、会社員の無実を証明した。 なぜそれほどDNA鑑定をする必要があるかというのは強制わいせつ罪の濡れ衣を着せられた場合は最低6か月以上の懲役刑になり、絶対に自分だけでなく被害者女性にも調べてもらわなければ重い社会的制裁をくらってしまうからである[11](『彼女は嘘をついている』の著者は強制わいせつ罪の濡れ衣を着せられ服役までさせられた)。
痴漢が逮捕される場合、被害者による現行犯逮捕なので、自分が痴漢をしていない場合、現行犯逮捕の条件を満たせないことを指摘するだけでも効果がある。
痴漢冤罪事件を扱った作品での対処策
・映画『それでもボクはやってない』……主人公は警察に『罰金を払えば釈放してやる』と勧められたが拒否し、さらに弁護士に『有罪率99.9%(100人に3人が冤罪)』などと痴漢冤罪裁判の現状を知らされたが、それでも否認し、検察に起訴され、泥沼の裁判で争うことを決意する。
・漫画『カバチタレ』……痴漢でっち上げで金を巻き上げる女子高生に濡れ衣を着せられて、罰金を払い釈放された男性は主人公に作中で扱っている罰金払えば釈放されるような準強制わいせつ罪(本作で扱っていないが迷惑防止条例も罰金刑で済む、ただし強制わいせつ罪は6か月以上10年以下の懲役になる)[12]の場合は金で相手側からの告訴を取り下げる方を勧められており[13]、本作は前述の勝ち目がない泥沼の裁判で争うことには否定的に描かれている。
このように『罰金刑で釈放されるより、裁判で争うことを選ぶ者』と『初犯なら罰金刑で釈放されることを選ぶ者』に分かれる。しかし後者の場合は警察に『会社に内緒にしてやるから白状しろ』と勧められ、初犯は社会的に公表されず前科がつくだけで一定期間で消滅し、長期勾留で会社を解雇されることに恐れがあり、裁判で争うことに勝ち目がないことなどからこれらの楽な方法で痴漢を認めてしまい妻子もちのサラリーマンは泣き寝入りしてしまう場合が多い。初犯で前科がつくより、裁判で時間と金を浪費して無罪を勝ちっとった方がずっと被害が大きいのが現状である。
司法の変化
最近は裁判においても被害者の証言だけに頼るのではなく、指紋や衣服の繊維の採取など物的証拠が重要視されるようになっている現実もある。これは痴漢冤罪に対する世論の高まりに対する司法の変化と見てよいだろう。
嘗ては痴漢被害にあった女性の訴えはほとんど取り上げられることはなかった。これに対して痴漢に対する社会的な意識が変わり、痴漢を厳しく処罰すべき対象の犯罪とする意識が構築され、司法においても女性の救済を第一義的に考えるようになった(司法において、今日では女性に限る。男性が女性から痴漢を受けてもほぼ警察は相手にしない)。痴漢の場合物的証拠がほとんど残らないため、女性の訴えが他の訴訟に比して重要視される傾向が起こった。だが行き過ぎた女性保護は当然冤罪の訴えの多発を招き、それに対するより戻しとして今日、物的証拠などの間接的な証拠が裁判において求められる傾向がある。現在はどの範囲を痴漢とするかという定義自体を司法の場で試行錯誤で決定しようとしている段階にある。日本の司法は判例主義を取っており、やがて告訴する側、被疑者、そして世論が納得するような痴漢行為の範囲、処罰の方法が定まっていくものと考えられる。
関連項目
冤罪
痴漢
公然猥褻罪
迷惑防止条例
女性専用車両
男性専用車両
御殿場事件
植草一秀(経済評論家。2006年、電車内での痴漢容疑で逮捕・起訴され、現在公判中。本人は冤罪であると主張しており、その可能性を主張する人物も少なくない)
高橋健一(お笑いコンビキングオブコメディのメンバー。2007年電車内の痴漢容疑で逮捕・起訴されるが、同年末に不起訴となり釈放され翌2008年に活動再開)
男性差別
痴漢えん罪被害者救済ネットワーク
おっとCHIKAN! - 1986年発売のおニャン子クラブの歌謡曲。女学生がラッシュアワーの電車の中で無実の男性を痴漢だと騒ぎ立ててストレス解消するという歌詞[3]
それでもボクはやってない - 痴漢冤罪をテーマにした映画
須藤典明(裁判官。刑事裁判で勝訴し痴漢冤罪を証明した原告男性の慰謝料を求める訴え(民事)を、被告女性が複数の男性から示談金の支払いを受けた実績があることを理由に退ける)
北原みのり「たとえばレイプを扱ったポルノの「表現」に対して痛みを感じる気持ちは、痴漢の冤罪で捕まった男の気持ちよりも社会的に低く思われてるんじゃない?」と、冤罪被害男性の不利益は不謹慎ポルノを目にした女性の不利益と同程度(あるいは低い)と主張。また、痴漢の現場を目撃していない場合に「目撃した」と偽証することは善意であると主張している。[4]
脚注
^ a b 痴漢えん罪ネットワーク 2007年2月24日
^ 夕刊フジ特捜班 痴漢冤罪の恐怖 2007年2月24日
^ 痴漢の被害というきわめて特殊な状況における被害者の心理を考慮するためである。
^ 2008年3月の大阪市営地下鉄での事例は示談金目当ての事件捏造であることが判明した数少ない一例である。
^ 東京新聞2007年5月12日朝刊
^ しかし被害者の精神的苦痛は被疑者の罪の意識より深刻であるとする主張もある。
^ ただし、両手でつり革をつかかみつつ下半身と陰部のみを女性の身体に押し付ける痴漢もいるため、両手がふさがっているのをアピールしているからといって痴漢ではないとは限らないので、立つ姿勢も重要になる。
^ 第三者が痴漢行為をしているのを見かけたならば注意する側に回り、自分が犯人ではないことを被害者や周りの人に積極的にアピールするなど。
^ 無実なのに痴漢に間違われた時、一体どうすればいいのか?
^ 必ず法律に明るい人に同伴してもらうこと。
^ 女性がDNA鑑定(衣類の提出)に協力したことにより下着の中に手を入れた痴漢が手についた付着物が決め手となり逮捕されたケースがある
^ 準強制わいせつ罪は親告罪であり、被害者からの告訴なしでは裁判ができない(カバチタレ6巻より)
^ 特にこの冤罪を訴える男性の場合は彼女に性病を移した罪が前科に残っており、前科が2度もあると有罪になる可能性がきわめて高いために絶対に裁判に持ちかけないようにした(カバチタレ6巻より)
文献
秋山賢三、荒木伸怡、庭山英雄、生駒巖(共編著)『痴漢冤罪の弁護』現代人文社、2004年12月、ISBN 4877982337
池上正樹『痴漢「冤罪裁判」 男にバンザイ通勤させる気か!』(小学館文庫)、小学館、2000年11月、ISBN 4094048014
植草一秀事件を検証する会(編著)『植草事件の真実 ひとりの人生を抹殺しようとするこれだけの力』ナビ出版、2007年2月、ISBN 4931569161
小澤実『左手の証明 記者が追いかけた痴漢冤罪事件868日の真実』ナナ・コーポレート・コミュニケーション、2007年6月、ISBN 4901491660
小泉知樹『彼女は嘘をついている』文藝春秋、2006年12月、ISBN 4163687009、[5]
周防正行 『それでもボクはやってない 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり』 幻冬舎、2007年1月、ISBN 4344012739
鈴木健夫 『ぼくは痴漢じゃない! 冤罪事件643日の記録』(新潮文庫)、新潮社、2004年6月、ISBN 4101012210
痴漢えん罪被害者ネットワーク(編)『Stop!痴漢えん罪 13人の無実の叫び』現代人文社、2002年11月、ISBN 4877981136
長崎事件弁護団(編)『なぜ痴漢えん罪は起こるのか 検証・長崎事件』現代人文社、2001年12月、ISBN 4877980725
夏木栄司『でっちあげ 痴漢冤罪の発生メカニズム』角川書店、2000年11月、ISBN 404883648X
前川優「推定有罪 すべてはここから始まった - ある痴漢えん罪事件の記録と記憶」(ブログ「週刊金曜日からのおしらせ」第19回「週刊金曜日ルポルタージュ大賞」優秀賞 2008年12月12日)